凍りのくじら

凍りのくじら
凍りのくじら
posted with amazlet on 06.02.22
辻村 深月
講談社 (2005/11)
BSの書評番組で見て気になって購入。
ドラえもんの世界をモチーフに描かれた小説。
各章のタイトルが全てドラえもんの秘密道具になってる。

主人公は、頭のよすぎな女子高生・理帆子。
彼女は常に頭の中で周りの人々をバカにしている。クラスメイトも恋人も母親も。
「バカにした」描写が多く書き連ねられている理帆子目線で物語は綴られる。

そこに現れた一つ上の先輩・別所。彼と、元彼・若尾によって物語は展開される。

この本の半分以上が、人物の描写や主人公のおかれた境遇の説明。とくに前半はそればっかしで正直どうしたもんかと思った。
けれど後半で様々な展開。
重要人物がそれこそ後半にやっと登場するのも顔をしかめたいけど。
読み進められたのは、スローペースなストーリーの中に頭のよすぎる理帆子の論理や、ドラえもん哲学がうまく入っていたから。
綿矢りさ作品が好き(といっても2作しかないけど)な私。なんでかって、これも頭のよすぎる女の子が冷めた目線でいろいろ描き綴ってる話だから。
別に私は「頭のよすぎる」わけではないけど、そういう女の子たちの気持ちがものすごい分かって、ものすごい納得で、ものすごいリンクしてフィットする。

後半のスピーディーな展開も秀逸で(このあたりでこの作品が「ミステリー」と呼ばれてる所以がわかってくるんだけど)、読後感が素敵。
「もう一回観たい!観るべき!」って普通、映画で思うもんだけど、小説で思ったのは初めて。
もう一回読み直したい!
そしたら絶対違う世界が見えてくる。